逃げる彼女に甘い彼 ~my sweetheart~
私は長野の別荘にいた。
気がついたら、そこで母とゆっくりした時間を楽しんでいた。

自宅を出かけ、駅構内で怪我をし、その時記憶の一部が飛んでるらしい。
何となく抜けてる感があるんだけど、生活にあまり支障はない。
大学卒業後家事手伝いをしていて、今25歳、もうすぐ26歳らしい。
おおよそ三年分記憶がないみたいだけど、お花や料理教室に通い花嫁修行。
でも、まだまだ海外旅行へ行ったりと独身を謳歌中らしい。
そう言う話を家族から聞いた。

記憶のせいか日中はやたらと疲れやすく、昼寝も欠かせない。
無理に思い出さなくてもいいと、普段の生活で少しずつ思い出すかもしれないと言われている。
この別荘は小さい頃よく来たところなので散策は懐かしい。
山に囲まれ、自然に恵まれた土地、食べ物が美味しい物が多いのが困るところだ。

ご飯を母と一緒に食べ、本を読んだり、散歩や近所を買い物のんびりとした生活。
思ったより料理が出来るので、この地の産物で作るのが楽しみだった。
しかし半月が過ぎた頃には飽きていた。
高校生の頃は社会に出て働きたいって言ってたような。
時折、自分が自分じゃないような感覚。
考えると、ズキっと痛む頭。

無理して思い出すと良くないからとお医者様が言っていた。
今のところ、困ることもないし。

明日は少し遠出してみようと思う。

ここに来て寝ている以外は母と愛犬とお手伝いさん以外接する人もいない。
友人はどうしているかな?
凛子や千歳、久々連絡取ってみようかな。
だが、スマホは新品のようで友人の情報がない。
母に聞くと、壊れて修理に出している。
家に戻る頃には元に戻るだろうと。
完全に持て余してしまった。
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