逃げる彼女に甘い彼 ~my sweetheart~
近くに川があって散策したり、山の野花を摘んで飾ったり。
子供の遊びのような生活が懐かしくもあったがすでに退屈で、
最近は記憶のない部分が気になってしょうがない。
考えると、ズキズキ痛む。


この田舎にいるよりもフランスへ行って静養するのもいいかと母に提案する。
「いいわね。もう少し体力が戻った頃に行きましょう。また一緒に行けるの楽しみだわ。」

そういえば、最近一緒に出かけたのではないか…。
「ねえ、最近お母様とパリに行かなかった？
せっかく行ったのに、なんかイライラして、怒ってセレクトショップで買い物した…。
男性用のお財布を買って…。
パリの後に、スイスに行って、昔の友人に会ったような…。」

「思い出してきたのね。
無理はしない…。少しずつ埋めていけばいいから…。

さてさて、次はフランス郊外でも行ってみましょうか？」

母は笑って次の旅行の計画をしていた。


焦ってはいけないと言われているけど、心がドクンドクンと失っている記憶にあせる。
すごく大切なことを忘れている気がした。


それから一週間、日課は決まったコースを散歩して、パン屋さんでパンを買っている。
公園でボーっとしてると、時々出会う男の人。
反対側のベンチでコーヒーを飲んでいる事が多い。
時々目が合うけど、話すことはない。
数日そんな日が重なって…。甘いおやつパンを買って食べようとしたら、その人が今日もいた。
元気がないようだったので、思わず彼のところへ行き、パンのお裾分け。
どうぞと言うと、ビックリして、でも笑顔でありがとうと受け取ってくれた。

代わりにと二本あった開いてないコーヒーを差し出して、よかったらといただいた。
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