逃げる彼女に甘い彼 ~my sweetheart~
妹 ー芽衣兄sideー
九条コンチェルン、副社長、九条圭志、芽衣の7つ上の兄だ。

芽衣がとうとう結婚する。

相手は柾木コーポレーションの次男坊。
初めて彼に会ったのはマンションにあるジムだった。
大学卒業したばかりの学生感が抜けていない彼を、数年前の自分の姿と重ねていた。
御曹司という立場上、他に選択肢もなく、期待だけは大きくて。
同じような境遇に、3つほど下の彼とは親近感があり、よく話はしていた。

家柄、ルックス、性格、どれもグレードが高く、後から知ったが学部は異なるが大学もオレと同じだった。頭脳も悪くない筈だ。
時々話すようになった時、芽衣をかわいいと言っていた。以前パーティーで出会ったと。
だから、程々に付き合い、妹と接触させる事はなかった。
妹は普通に見て、美人の部類と思うが、性格がはっきりしている分、裏表がない。
なので、いわゆるお嬢さん育ちの天然だ。
大学生になったばかりの芽衣は女子校育ちで男性に免疫がなく、こういう男にハマると厄介だと見ていた。
わざわざ紹介することはしない。
彼女が少しずつ恋愛をして、大人になり、結婚していくのをゆっくりと見守るのが兄として出来ることだ。だから、就職したいと言った時も後押しした。
彼女の成長を楽しむ優しい兄だと、自分でも自覚している。若干、シスコンか。


今でこそ、副社長としてなんとかやっているが、昔は、特に高校時代は荒れに荒れていた。
親父は静観し、母親は生粋のお嬢様であっけらかんとしていたが、この時期の俺には手を焼いていたようだった。見た目も派手で、女遊びも盛ん、お陰で近くの不良に絡まれて。
いつも生傷が絶えない生活。
空手の段位のおかげで、ケンカは絡まれればやって、潰していたら負け知らずになって、
さらに不良のレッテルを張られる。
そもそも、跡取りとか、御曹司とか、周りの反応にうんざりしていて、尖っていただけなのだが、
この時期の俺はかなりやばかったと思う。
< 206 / 213 >

この作品をシェア

pagetop