逃げる彼女に甘い彼 ~my sweetheart~
週が明けて、総務部の部長から呼ばれた。
50代のいかにも部長って感じの人で滅多に話す機会はないのだけど。
そこには課長もいて、

「君に海外事業部が助っ人に来て欲しいと依頼があってね。
桐生課長の課なんだけど、なんでもフランスの企業との取り次ぎをたまたま君が電話で受けて
助かったと。先方の会社の人間も信頼しているから、週2、3日数時間でいいから
ヘルプに来てくれないかと。どうだい?移動ではなく、あくまで臨時のサポートなんだけどね。」

なんてことだ。
あの少しのやり取りで何が信頼に値するのか意味がわからない。
でも、部長課長の顔を見れば、海外事業部に貸しを作りたそうな雰囲気。
断れないじゃない。

「具体的に何をするのでしょう?」

「事務処理と書類作成らしいよ。君は書類丁寧だからあちらでも力を発揮できると思うよ。
三年目だし、少しちがうことにトライしてみては。
プロジェクト終了までの数カ月だから。」

ここまで言われて、トライしない若手はヤル気がないと思われるじゃない。
書類作成なら桐生課長と接することもそうないだろうか。
担当の社員が窓口というところかな。

「承知しました。力添え出来るよう頑張ります。」

ありがとうとうれしそうに上司は言った。後でメールで指示があるとのこと。
はー。いつからなんだろう。
身バレを恐れているのによりによって桐生課長の課とは。
色んなことにチャレンジしたくて会社勤めをしているのに、気が重い。
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