逃げる彼女に甘い彼 ~my sweetheart~
まあ、彼のここが良いところだけど。
変に特別扱いしないし、押しと引きが上手い人たらしだ。
女性にもやたらとモテる。

「だったらキュンときちゃう?」

「そりゃ、芽衣じゃなかったらキュンだろ。」

軽口やり取りがいつものご挨拶。
気兼ねしない友人の一人だ。

お店で接客してもらい小物をいくつかチョイス。
結局、稽古用のお着物を新調してしまった。
なかなかの商売上手だ。

夕方になり、薄暗くなってきた。
充実した休日だ。

「今日は出れないけど、着物出来た時にでも食事行かない?」

「うん。いいね。じゃ、出来上がったら連絡してね。」

「ああ。ほんとタクシー呼ばなくていいのか? 気をつけて帰れよ。」

「うん。このまま、デパート寄りたいし、大丈夫。じゃあね。」

通りを出て、デパートまでの大通りを歩き始めると。

後ろから声をかけられる。

「芽衣さん」

振り返って、その人物に動揺した。
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