逃げる彼女に甘い彼 ~my sweetheart~
ワインも美味しくてグイグイ飲んでしまう。

「お着物がお似合いで、僕は緊張してますよ。芽衣さんに。お出かけだったんですか?」

以前食事した時とも、職場での姿とも空気が違って少し動揺してしまう。
課長ってこんな感じに女性と接するのか。慣れてるなあ。とか思ったり。

「お花の稽古に。時々従兄弟に指導してもらっていて。
その後は知り合いの呉服屋へ着物を。」

当たり障りのない会話。
駆け引きと、ウソをついている罪悪感で心が痛い。

「芽衣さんは普段は行儀見習いを?」

「ええ、そうですね。そういうことも多いです。」

お嬢様としての振る舞いを無難にやり過ごす。
会話が上手で色々と話題を振ってくれるので、思った以上に楽しい。
やはり仕事ができる人は女の扱いも上手いものだ。

食事もデザートになる頃。

「さて、僕と賭けをしませんか?ここにコインがあります。表が出たら動物園。裏が出たら植物園。
明日デートしましょう。」

はい?どっちが出てもデートじゃないか。

「ふふふ。明日の予定は決定なんですね?」

「俺と健全なデートは嫌?」

突然の“俺”という呼び方にドキッとした。
普段は”僕” や “ 私“と言うのに。
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