逃げる彼女に甘い彼 ~my sweetheart~
「お客様、彼女は業務時間です。今はご無理かと。
とりあえず、その手をお離しになられたほうがよいかと。」

「誰に言ってるんだ!偉そうに。自分が誘ってもらえそうな女じゃないからって。」

「このままでは警備のものが来ますよ。」

「は。俺を誰だと思ってるんだ。」

彼女の腕を離し、今度は私へと近づいてくる。

「失礼ですが、存じ上げません。」

「俺は◯×建設の次期社長だ。」

「はあ。それが。」

「俺に逆らったら、うちの会社の契約が飛ぶぞ。
うちの会社はバックは九条コンツェルンだ。」

「はあ、我が社は柾木コーポレーションの傘下になりますが、共に友好関係な企業経営かと。」

「女子社員が俺に楯突くのか!」

カッとなって、私のメガネを取り上げた。その時に彼の爪が頬を掠め、ズキッと痛みを
感じた。

騒ぎにザワザワとなって人が集まりはじめた。

あまりに横柄な態度とこんなバカが九条を盾に偉そうに振る舞うことがあるのかと。
父や兄がどれだけ他から信頼を得るために、損なわないために自分の振る舞いを律しているのか。

もうどうにでなれだった、私が守って隠しているものに意味が無い。
こんなバカな人間のせいで、九条や柾木で勤勉に働いている社員の名誉が損なわれると
思うと、この男をズタズタにして二度と社へ足を踏み入れさせないと思った。

「盾などついておりません。あなたが勝手に吠えてるのでしょう。」

真っ赤になって吠える男を冷めた目で見つめた。
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