逃げる彼女に甘い彼 ~my sweetheart~
突然相談もなく退社して、俺は腹が立っていた。

辞めるにしても、きちんと一定期間を経て引き継ぎをし退職するべきだ。

しかし、帰社して村上から聞いた内容は芽衣の正体がバレたこと。

受付でトラブルに巻き込まれたことだった。


だからって、俺にまず相談しろよ。

その気持ちが強くて、なかなか捕まらない芽衣に痺れを切らし、マンションへ
向かった。

エントランスを通らずとも行けるのは同じマンションで良かった。
ドアの前で、意気込んでチャイムを鳴らす。
怒鳴って、叱るくらいの勢いだった。
一応彼氏なんだから、相談しろよ!と不貞腐れていたのかもしれない。

ようやくガチャっと扉が開いた彼女はボロボロだった。
モコモコパジャマを着て、泣きはらした顔で、食事もとってないのか
青白い顔をしていて。

怪我をした子鹿のように傷ついていた。

とても怒る、怒鳴るなんて出来ない。


思わず胸の中に抱きしめた。

震えて、胸の中で声を殺して泣く姿が辛くて、どんなに傷ついているのかが分かった。
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