逃げる彼女に甘い彼 ~my sweetheart~
今日は着物が出来上がったので呉服屋さんへ千歳を訪ねてやってきた。

最近は九条の娘として振る舞いが増えたので、父が私に運転手さんをつけた。
警備の面で止むを得ず、行動が把握されているような気もするが仕方ない。
実際、着物の移動も多くなったのでありがたいけど。
今日も稽古の後で、着物だ。
試着には着物の方が都合がいいので、呉服店の前で降ろしてもらった。

「若旦那、お邪魔しますよ。」

「よ、芽衣いらっしゃい。出来てるよ。
多分気にいると思う。試着してみる?」

「ぜひ。楽しみだな〜。」

奥に通してもらうと、仕立てのできあがった着物が掛けられていた。
それはベージュをベースに薄い大柄の花が。
目立たないいろで、大ぶりの柄が気に入り、少しゴールドも施され、帯を変えると印象も変わり変化を楽しめそうな一着だ。
高価なお着物だ大事にたくさん着る機会があるといいな。

着付けのサポートを女性の従業員さんに手伝ってもらい、帯は途中で入ってきた千歳が作ってくれた。自分では出来ない珍しい結びだ。

「わー、この結び珍しいね。素敵。帯柄も映えるし。すごいね、さすが若旦那だね千歳。」

「うん、よく似合う。この柄に目を付けたのはさすがだ、芽衣。
一見、控えめな柄だけど物が上質で品があるし、帯や小物で遊びやすい。
お姫様だな。かわいい。」

「褒めすぎですよ、若旦那! さすが次期社長。」
珍しく褒められて照れる。

「 仕事辞めたんだって。だったら、今日これから食事行かないか?
おれもこれからアポイントないし。出れるんだ。食事までどこか寄ってもいいし。」

< 88 / 213 >

この作品をシェア

pagetop