逃げる彼女に甘い彼 ~my sweetheart~
女性は上機嫌で蓮さんに寄り添っている。
見たくない光景を見てしまった。この場で彼に見つかって見っともない姿を見られたくなくて、
すぐに後ろを向いて部屋へ戻ろうとした。
二人の会話が響き、なんか分からない感情で目が熱くなり、視界がボヤける。
早く部屋へ戻ろう。

その時、自分の個室の襖が開いて、千歳が出てきた。
「芽衣〜。遅いから心配するだろう。
酔ったか?ってか、具合悪くなったか、泣いてるのか?」

そう言って、肩へ腕をまわし部屋へ戻ろうとした。


「芽衣!」

背後から聞こえる声は間違いなく蓮さんで、でも振り返る勇気がなくそのまま個室へ入った。

瞬時に、状況を把握しただろう千歳は庇うように抱き止める。

そこへ
「失礼!」

襖が開き、その光景を見た蓮さんが私の腕を引いた。

「どういうこと?」
低い声で言われ立ち竦む私に、千歳は状況を察したのか

「芽衣の友人で篠原千歳と申します。
とりあえず、今はこの場をひかえてもらえますか。
食事会なんで。
あなたもお連れの方がお待ちのようですし。」

皮肉を言って、襖を閉めて千歳と二人きりになった。
私は蓮さんを見ることはなく、
襖の向こう側で彼が立ち去る足音がきこえた。
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