懐妊初夜~一途な社長は求愛の手を緩めない~
そう言い残し、社長はタブレットを手に検討会へと出かけていった。
私は一連の言葉で腰が砕けてしまい、書類を抱えたまま立ち上がることができなかった。
(えっ……冗談……)
にしては、社長の言葉は明確かつ具体的だった。
はっきり〝抱ける〟と。
そしてホテルを予約するからリスケはなしだと。
(待っ……えっ……ほんとに……?)
この社長室でのたった数分の間に、ものすごい展開になった。
社長に話した話は本当。私は自分と血の繋がった子どもが欲しい。
男性と付き合って、結婚して、愛を育んで……なんて順当な手段を通らず、どうすればその願いが叶えられるかと、考えていたけれど……。
(もしかして今……叶いかけてる?)
昔からの付き合いである幼馴染には、男女の関係を持ちかけて気まずくなったら嫌だなと思っていた。年下の男の子で弟みたいな気持ちもあったから、相手はもちろんのこと私もその気になれない可能性が大きかった。
見ず知らずの人にお願いするというのが、一番現実的なラインかと思っていた。体目的の人であれば後々になって〝親権が〟などと主張してくることもないはず。いわゆるワンナイトラブ的なことで、運よくこの身に命が宿るなら……と考えていた。