懐妊初夜~一途な社長は求愛の手を緩めない~
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私、宮内綾乃は母子家庭で育った。
生まれたときから父はおらず、今日までずーっと母と子のふたり。私が東京で就職したので今は離れて暮らしているものの、連絡はまめに取っているし、二カ月に一度は会っている。
家庭事情を人に説明するとよく「大変だったね」と言われるけれど、当事者としては特に大変だったという意識はない。それは唯一の家族だった母親が飛びぬけて明るく楽しい人で、いつも私を楽しませてくれていたからだ。
さっき匂宮のお嬢さまに話した魔女の話も母が言い出したこと。
保育園に通うようになって〝どうして私にはお父さんがいないんだろう?〟と気にし始めた私に、母は神妙な顔で言った。
『綾乃。よく聞いて。これは誰にも秘密なんだけど……』
『お母さんね……実は魔女なの。自分ひとりの体だけで子どもが産めちゃうの!』
それを聞かされたときの私(※園児)の衝撃たるや。
自分のお母さんが魔女!?
魔女って、日曜日の朝にやってるあのアニメ番組の主人公の仲間でしょう?
それがまさかこんなに近くにいたなんて!
『だから綾乃も、ほんとは人間じゃなくて魔女なのよ』
しかも私も!?
『とっても特別な存在なんだから。でも、このことは誰にも秘密ね?』