懐妊初夜~一途な社長は求愛の手を緩めない~
光太郎は悪びれることなく、否定もせず、飄々とした調子で答える。
「顔と若さも大事じゃない?会食に連れていくこともあるだろうしさ。何より鷹哉の激務をフォローするんだから、若くて体力ないとキッツイよ」
「効率の悪い奴が無駄に体力を消費するんだ。必要なのは作業の最短ルートを瞬時に見つけられる知恵と経験値! それ以外はいらん」
「いいから一度会ってみなって。鷹哉も気に入るから」
「ダメだ。この女は不採用。もう採用通知を出してしまったんなら他の役員の秘書にどうか打診しろ。俺はいらない!」
「そんなこと言ってもさー」
意味のない応酬をしているうちに社長室に辿りつく。まだこの後もやらなければいけないことが山積みで俺は焦っていた。生駒の話を半分聞き流しながら、扉を開けたら――。
「その宮内ちゃん、もう社長室に呼んでるんだよねー」
「え?」
扉を開けたら、社長室の真ん中に姿勢正しく佇んでいる女の姿があった。履歴書の写真と同じ顔の小娘。実物は写真の印象より少し背が高く、写真の印象より少しばかり美人だった。二十四という歳のわりには落ち着いた雰囲気を持っている。
ただひとつ。先ほどまでの俺と光太郎の会話が聞こえていたのか、小娘は見るからにムッとして俺の顔を睨みつけていた。