懐妊初夜~一途な社長は求愛の手を緩めない~
剥き出しの敵意を受けた俺も臨戦態勢になる。
「誰の許可を取ってこの部屋に入った」
少し凄めば萎縮するかと思ったが、娘は凛々しい顔になって答えた。
「生駒さんにご案内いただきました」
「ここは私の部屋だが」
「生駒さんに部屋に通す権限がなかったのならそれは私の知り及ばないところです。――ですが、ご不快な思いをさせてしまったのならお詫びいたします」
深々と頭を下げられ、娘のつむじが見えた。
詫びを入れられてもちっとも謝られている気がしない。
それは、彼女の言い分が正しいとわかっているから。初めて来る会社だ。人に案内されれば付き従うだろう。それくらい俺にもわかる。
しかし。
「さっきの話は聞こえていたんだろう。言葉の通りだ。私はきみを秘書にするつもりはない。採用を取り消したりはしないが、どの部署で働くかはそこにいる生駒と好きに話し合ってくれ」
「お言葉ですが」
「……なんだ」
本当に俺より七つも年下なんだろうかと、返事をしながら不思議な気持ちになった。
見かけは確かに若いのだが、反発してくる真っ直ぐな顔は知的で、凛と綺麗で、経験値の高さを窺わせる。
宮内というらしいその女は、俺に向かってこう言った。
きっぱりと。