懐妊初夜~一途な社長は求愛の手を緩めない~

 よくこんなに真正面から好戦的な目ができるものだと、感心してしまう。
 社長に就任してからというもの、元から折り合いが悪い人間からは目をそらされるようになった。こんな風に真正面から見つめられるのは新鮮だ。

 なぜだか悪い気はしない。

「お互いその気がないというなら話は簡単だろう。うちでの採用は蹴ってもいいし、どこか別の部署に行ってもらってもいい。ほかに行くあてはあるのか?」
「……ありません」
「そうか。なら、生駒。いったんお前の部署で預かって、他部署と調整してから異動を――」
「ちょっと待ってください」
「……なんだ?」

 応接セットのソファに座ったあともピンと背筋が伸びている。
 俺の隣に座っていた光太郎が〝ね? 面白くない?〟とアイコンタクトしてくるのを煩わしく思いながら、宮内の目を見つめ返す。

 やっぱり、悪い気はしない。

 真っ直ぐな目は見ていて気持ちがいい。

「私は〝社長秘書〟として採用いただいたはずです。試用期間もなく〝やっぱりナシ〟と言われても納得できません」

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