懐妊初夜~一途な社長は求愛の手を緩めない~
「いいだろう」
仕事ぶりを見て、使えそうなら使えばいいし、使えなければ捨てればいい。
「名乗るのが遅くなった。名久井鷹哉だ」
応接椅子に座ったまま握手の手を差し伸べると、娘はおずおずと自分も手を差し出してきた。
「私も……申し遅れました。宮内綾乃と申します」
握った手は小さく、ほっそりとしていて驚いたことを覚えている。
でもそれ以上に、さっきまで吠える柴犬のようだった顔が、安心したように〝ほうっ〟と頬を緩ませたのが、なんとも印象的だった。
*
そんな経緯で俺の秘書になった宮内綾乃とは、今年でもう三年の付き合いになる。
素朴な雰囲気。いつも自然体で細やかなフォローをしてくれる。そんな宮内はすでに酸素のような存在で、俺にはなくてはならないものになった。
あれから三年が経っても宮内はまだ二十七歳。若くてこれだけ優秀なら他の企業からの引き合いもあるだろう。勤務条件は悪くないはずだが、できるだけ気持ちよく働いてもらって、長く続けてほしい。
そんな気持ちから俺は提案をした。