見守り愛 〜ビタースイートな副社長と一目惚れの恋を成就したい〜*おまけ終了*
年明け前の九月に、俺は海外支社から本社へ異動した。

表向きの事情は、長年のバイヤーとしての功績を買い、副社長に就任させる…というのだったが、実は、社長になったばかりの兄貴を助けてやれ、というのが本当の理由で、三年間も海外でのんびり生活してきた俺には、かなりの葛藤が生まれた。


それに、一人暮らしの部屋が見つかるまでは実家暮らしを命じられ、親の目の届く範囲に住まなければいけなくなったことで、窮屈さも感じていた。


そんな時、社内行事でスポーツ大会があると聞き、根っから体を動かすのが好きだった俺は、ストレス発散も兼ね、「出てみようかな」と秘書に言った。

退屈凌ぎにもなると思ったし、日本に帰ってきてからは慢性の運動不足が続いていたから丁度いいと考えた。


ところが、十月初めに兄貴の新居へお邪魔した時、「社内行事に参加する」と言うと、兄貴は唖然とした顔つきで、「役員がそんな行事に参加するなんて聞いたことがない!」と驚いた。



「俺も専務時代には参加したことがないぞ」

「え?役員は出ちゃいけないのか?」

「いや、そういう決まりはないが」


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