見守り愛 〜ビタースイートな副社長と一目惚れの恋を成就したい〜*おまけ終了*
「神野さん?」


驚いた様な目をする高吉君の顔が歪んでいく。
ゆらゆらと陽炎の様に視界が揺れて、目頭が熱を帯びてくる。

ツンと鼻の奥が痛んで熱い。
それに気づいて、椅子から立ち上がろうとした。


その瞬間、誰かに抱きしめられた。
ビクッとしたが、誰だか直ぐに分かり、ギュッと袖を握った__。



「他の男の前で泣くな」


厳しい声で言われても怖くは感じなかった。
声色の割に私を包む腕の力は優しくて、胸の中に温もりが広がっていったから。


「…全く。いつになったら声をかけてくるのかと朝から待っていたのに、一向にこないから俺の方から動いただろ」


ぎゅっと腕に力を込められ、コクコクと頷きを返す。
彼は私を抱いたまま椅子から立ち上がらせ、周りの人達に顔を見せない様にして、社食から連れ出してくれた。



その間、社食内はシ…ンと静まり返っていた。

多分、皆は唖然としていたに違いないし、それに、私自身は胸がいっぱいで、何も見えないし、聞こえてこない状況だった。


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