禁猟区のアリス
13

「真冬に水風呂に入れられたことは?」

ウサギが尋ねた。先ほどとは違い、どこか事務的な言い方だ。


「犬用の檻に閉じこめられて、食事を与えてもらえなかったことは?」

黒猫が少し離れたピアノの椅子に浅く腰掛けて、私とウサギの会話を聞いていた。

食事と聞いて、私の腹が鳴った。


「食べたければどうぞ」ウサギは相変わらず冷たい口調で言う。

「僕はティータイムには薄いキュウリのサンドイッチしか認めないけど」


私は皿の上の大きなサンドイッチに手を伸ばし、遠慮なくそれにかぶりついた。

あごが外れるほどの大きさのサンドイッチだ。パンの隙間からはみ出した野菜がボタボタと皿の上にこぼれ落ちた。

離れた場所から見ていた黒猫が、オエッと吐くマネをした。


「君が溺死させた子供がそんな食べ方をしたら、君はきっと彼女に罰を与えただろう」


私が再婚した女には、連れ子がいた。小さくてやせっぽちで、私には笑顔すら見せなかった。

愛そうと努力をしたつもりだ。あのわき腹の傷痕を見るまでは。

私は女を問いつめた。時には手を挙げたこともあった。女は言った、私に。


「元カレがやったのよ」

ウサギが女の声をまねた。


再婚を後悔した。でもすでに、女の腹には私の子供が入っていた。心当たりはあったが、それが私の子供か、確証はなかった。

だが、産まれた子供は私の幼い頃によく似ていた。


産まれた私の子供、夏月(カルナ)が成長するにつれ、連れ子に対する愛情は薄れていった。それは否定できない。

特にあのわき腹。

妻に、私以外の男がいた証し。頭では理解していても。

嫉妬は確か「七つの死に至る罪」のひとつだったか。もっとも、死に至ったのは……。


笑わない子供は陰気くさく、私は、彼女自身のためだと言い訳をして、連れ子につらく当たった。
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