禁猟区のアリス
5
わたしは仕方なく、テーブルの端に置かれた陶器のキャニスターから角砂糖を取り出して、3つ、ウサギのカップへそっと落とした。
「そんなに入れたら、甘すぎると思うわ」
銀のお盆に、やたら大きなサンドイッチを乗せて、黒猫が呆れたように言った。
「わかってないのは、黒猫の方だろ。何だい、その下品なサンドイッチは。ティータイムには、薄いキュウリのサンドイッチって決まっているじゃないか」
ウサギがわざとらしくため息をついた。
「ええ。ティータイムにホットミルクなのも、どうかと思うけどね。それに、これはカフェカメリアの看板メニュー。変える気はないわ」
黒猫がサンドイッチをテーブルに置いた。
「食べたくなければ、無理することないのよ。でも、キュウリのサンドイッチなんてお断り。どうしてもなら、よそへ行ってちょうだい」
ウサギは黒猫を横目で睨んで、テーブルをコツコツと叩き、迷う仕草を繰り返してから、サンドイッチの皿をわたしの方へ押しやった。食べないことに決めたらしい。
「わたしは、アリス、なんですか?」
小さな声でおそるおそる、わたしは尋ねた。
無意味な言葉は、許されない。ママの機嫌が悪くなれば、タバコだ。
わたしは目をぎゅっと瞑った。肉の焼け焦げる臭いがした気がした。
「君は、どう思う?」
ウサギが問い返した。
わたしには、答えが分からない。でも、わからないと言えば、パパが冷たい水の中にわたしを沈める。
ウサギは、ふぅっと長く息を吐いてから、ソファーの背もたれに体を預けた。
「ここでは、みんながアリスなんだ。君も、君以外も」
「わたし、以外?」
「そう。例外はないね。もちろん、ここから出れば、君はアリスではない誰か、だ」
わたしは仕方なく、テーブルの端に置かれた陶器のキャニスターから角砂糖を取り出して、3つ、ウサギのカップへそっと落とした。
「そんなに入れたら、甘すぎると思うわ」
銀のお盆に、やたら大きなサンドイッチを乗せて、黒猫が呆れたように言った。
「わかってないのは、黒猫の方だろ。何だい、その下品なサンドイッチは。ティータイムには、薄いキュウリのサンドイッチって決まっているじゃないか」
ウサギがわざとらしくため息をついた。
「ええ。ティータイムにホットミルクなのも、どうかと思うけどね。それに、これはカフェカメリアの看板メニュー。変える気はないわ」
黒猫がサンドイッチをテーブルに置いた。
「食べたくなければ、無理することないのよ。でも、キュウリのサンドイッチなんてお断り。どうしてもなら、よそへ行ってちょうだい」
ウサギは黒猫を横目で睨んで、テーブルをコツコツと叩き、迷う仕草を繰り返してから、サンドイッチの皿をわたしの方へ押しやった。食べないことに決めたらしい。
「わたしは、アリス、なんですか?」
小さな声でおそるおそる、わたしは尋ねた。
無意味な言葉は、許されない。ママの機嫌が悪くなれば、タバコだ。
わたしは目をぎゅっと瞑った。肉の焼け焦げる臭いがした気がした。
「君は、どう思う?」
ウサギが問い返した。
わたしには、答えが分からない。でも、わからないと言えば、パパが冷たい水の中にわたしを沈める。
ウサギは、ふぅっと長く息を吐いてから、ソファーの背もたれに体を預けた。
「ここでは、みんながアリスなんだ。君も、君以外も」
「わたし、以外?」
「そう。例外はないね。もちろん、ここから出れば、君はアリスではない誰か、だ」