禁猟区のアリス


わたしは両手で耳をふさぐ。水の中でトクントクンと聞こえていた、わたしの生きている音が、今は聞こえてこない。


「ギャクタイによるデキシ」歌うようにウサギが言う。


聞きたくはなかったが、反面、やっぱりなと、どこか諦めに似た気持ちがした。

デキシ。それがパパのキョウイクのせいだって、そのくらい、ウサギの顔を見なくてもわかる。


「そして罪状は、虐待による殺害」

ウサギは探るようにわたしを見つめて、にやりと笑った。

冷たい指先が、微かに震えた。


コツコツとエナメルのパンプスの靴音を響かせて、黒猫がピアノの前に座った。一音、優しげな音が鳴る。


「罪状……って…」

わたしは冷たい指先を両手で握って、ウサギに尋ねる。

ギャクタイによるデキシ、と、虐待による殺害、がうまく繋がらない。


ウサギは片手で頬杖をついて、ミルクのカップをかき回す。黒猫はしなやかな指先から、ゆったりと優しい音を鳴らす。


耳の中で水の音が聞こえた。

「罪状は罪状さ」
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