ホームズの子孫はピンチになると駆けつける
「お願いしま〜す!」

園子ちゃんはそう言い、診療所から出ようとしたものの、ゴンッと頭を診療所のドアにぶつけてしまった。

「大丈夫ですか?」

ワトソン先生が心配すると、「大丈夫です!」と目を輝かせながら園子ちゃんは笑う。そして診療所を出て行った。

「おっちょこちょいな性格なの?」

苦笑しながら訊ねるワトソン先生に、私も苦笑いする。

「おっちょこちょいというか、トラブルメーカーなんです」

時計を見れば、午後の診療時間まであと少し。私たちは慌てて割れた花瓶を片付けた。



夕方仕事が終わり家に帰ると、朝言っていた通りホームズさんは帰ってきていなかった。

事件の話を聞かせてもらうことを楽しみにしながら、ワトソン先生の夕食を作る。今日作るのはローストビーフだ。

「ワトソン先生、あと少しでできます」

「わかった。じゃあ今のうちに食後のコーヒーの準備をしておくね」

ホームズさんは事件の調査で食べないこともあるため、ワトソン先生と二人きりで食事をすることはある。でも、やっぱり三人いないと少し寂しい。
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