メリークリスマス!
理恵はくるりと体の向きを変えて朝陽の胸に自分の額をつけた。
目を閉じて気持ちを落ち着けようとする。
朝陽は理恵の背中をさすりながら理恵の肩にかけた自分の上着の前をしめて理恵の体が冷えないようにしてくれた。
「ありがとう。」
理恵が朝陽の体から離れる。

朝陽は何も言わずに首を横に振った。

「じゃあ、行くね」
「あぁ。」
朝陽は理恵の後ろ姿を見送ってから空を見上げた。

この仕事をしていると悲しい別れもたくさんある。
助けたい命を救えない時、自分の技術では完全に治せない時、自分自身を責める。
患者に余命を宣告するとき、その人の人生を真っ暗にしてしまうようで、自分は悪魔になった気持ちになることもある。

でも、次の患者はやってくる。
次の命を救うために・・・また前を向く。
< 119 / 154 >

この作品をシェア

pagetop