メリークリスマス!
「奈央」
あまりの人ごみに背の低い奈央が埋もれそうになるのを見て仁が立ち止まる。
「やっぱりやめようか。奈央が窒息しそうだ。」
仁の前に飛び出るように人ごみから出てきた奈央を仁がキャッチする。
「うんん。ここまで来たら見たい!」
奈央の言葉に仁は少し先を見る。
背の高い仁からはすでに会場が見えている。会場まではあと少しだ。
「あと少しだから頑張れ」
そう言って仁は奈央の手を握った。

自分から握っておいて実はかなり照れている仁。
きっと奈央はこんなことも意識すらしていないのだろうと思いながら進んでいく。
「大丈夫か?」
奈央の足元を見ようと振り返ると奈央が耳まで赤くしていた。

その赤さは寒さのせいではないと仁にはわかる。
「照れんなよ。」
仁がうれしさを隠しきれずに行った言葉に奈央の顔はさらに赤くなった。
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