メリークリスマス!
ぶっきらぼうな言葉は慣れっこの葵。
この不器用な夫は言葉や態度は冷たく感じることがあっても本当は心に熱いものをたくさん持っている。
自分への深くて大きな愛情も持ってくれていることをちゃんと葵にはわかっていた。
「きれいでしょ?」
「あぁ。この日のために張り切って準備してくれてたもんな。」
「うん。」

病院の中の一角にクリスマスツリーを飾り、その周りには葵がセレクトした絵本が並べられている。入院している子供たちが寂しい思いをしないようにと始めた企画も、もう初めて5年がたった。

「家のツリーの方が私は好きだけどね。」
「そうだな。」
葵と廉の自宅には書庫に大きなツリーがある。

「今年は残念だな~」
そういう葵の頭を廉はそっと撫でた。
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