メリークリスマス!
葵が夜になり、夕食前に運動をしようと車いすで大きなツリーのあるフロアに向かうとそこには白衣姿の廉がしゃがんで車いすに乗っている小さな女の子に話をしていた。
「病院だからサンタは来ないね」
「どうして?」
「だって煙突ないでしょ」
「あるよ」
「嘘つき。病院だから来ないもん」
その女の子のことを葵はよく知っている。

小児がんの女の子は産まれてからほとんどの時間を病院で過ごしている。
彼女の両親は治療費を稼ぐことに一生懸命で普段はあまり病院に姿を見せない。

クリスマスも来れないと葵もその子から聞いていた。

「天使なんていないのきっと。サンタさんも」
女の子の言葉に廉はツリーをじっとみてから穏やかな口調で答えた。
「いるよ。きっと。信じればきっとなんだって叶うんだ。」
「嘘だよ。」
「嘘だと思って願ってみたらいい。きっと叶う。すぐじゃなくてもいつか叶う。きっと。」
「本当?」
「どうかな。でも、あきらめてがっかりするより、信じてワクワクしていたいじゃん。そのほうが楽しい。」
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