君がいればそれだけで。
王女と鬼の国で会った時、目の前で転んだご老人に手も差し伸べず、声もかけずに素通りしたんだ。しかも、花を売っている子供のかごを取り上げてごみ箱に捨てていた。遠巻きに見ていただけだから会話までは聞いていないが、子供は大泣きしておりご老人は医者にかかっていた。だから、てっきり情も何もない人だと思っていたんだ。

「あぁ、見ていたのか」

「遠巻きにだけどな」

「新米だったのか?」

パルさんの問いかけにそうだと答えると納得したようにため息を吐いた。俺たちが何か誤解しているんだろう。誰かの誤解しているような言葉を聞くと必ずため息を吐くもんな。
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