君がいればそれだけで。
何だ、そんな気の利いた事もちゃんと出来るのかと思いながらクヲラの話を聞いていると道が無くなってしまった。また部屋のように広めの場所に着いたのだが、あるのは衣服だけ。ここにいた人々は皆、呑み込まれてしまったのか。
一瞬、絶望にかられたが、奥にあったこぶのような物が一定の感覚で波打っている。体内のような場所だし、これが心臓か?そう思いながら短剣を抜いて身構えるとこぶのような物は破裂して赤い液体と共に姿を消した。

「だーっ、くそっ!その上着・・・、シオラか?」

「その声・・・。ラズハルドか?」

皮膚にかからぬよう、クヲラと共に上着を頭から被ると後ろからラズハルドの声が聞こえた。液体が落ちてこなくなってから声の方を見てみると、こぶがあった所にラズハルドが安心したような表情で立っていた。
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