君がいればそれだけで。
王女の頬に軽く触れながら見つめていた兄の頬を王女は平手打ちした。寿命があるという幸せを知らないからだ。長く生きれば生きるほど愛する人が増え、愛する人の不幸や死に立ち合う事が多くなる。その辛さが分からない内は永遠を願うなといつも言っていた。

「酷いなぁ、叩くなんて。仮にもお兄ちゃんなんだけど?」

「兄だというのなら妹を困らせないで」

「困らせるつもりは無いよ。そこにいる鬼を一人だけ斬らせてくれれば、後は君の血をもらって不老不死になれるんだから。・・・俺たちの夢が叶うんだ」

「あなたの身勝手な欲望の間違いでしょう?私は望んでいないわ」
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