君がいればそれだけで。
拒否し続ける王女に再び触れようとした時、俺の体は勝手に動いていた。王女の腕を掴んで引き寄せ、そのまま抱き締めていた。平気で生き物を殺せてしまうその手で触れてほしくなかったんだ。兄と違って王女は誰も殺したくない、なりたくて不老不死になった訳じゃないから。

「何か用かな?」

「その手で触れないでください。怒りで気が狂いそうだ」

「パル・・・?」

そんな目で見つめないでくれ。ただでさえ壊れてしまいそうなくらい力が入りそうな所を抑えているのに、泣きそうな表情で上目遣いなんかされたら俺は本当にあなたの兄を殺してしまう。あなたを泣かせる者の命を奪いたくなる。
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