君がいればそれだけで。
王女の兄は自分の傷や怪我を治しながら俺たちと戦っていた。でも、思ったより再生能力は体力を持っていってしまう。そのため、体を万全にするつもりが逆に体力を減らしてしまっていると。
ただそれでも三人で戦ってやっと立ち向かっているという感じか。それも仕方のない話か。王女が見ている前で生き物を殺せるわけないんだ。どんな相手であっても泣いてしまう事を知っていて、殺せるわけないんだよ。

「手加減は無用だよ?」

「悩んでいるんだ。本当にお前を殺して良いのか」

数十分の戦いの末、両足を切られ庭の芝生の上に横たわって斬られるのを待っている王女の兄はとても楽しそうだった。まるで、死なないと分かっているような余裕と自信。その表情が更に俺を混乱させた。本当に斬っても良いのかと。
< 174 / 300 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop