君がいればそれだけで。
だめだ、このままでは王女の兄は亡くなってしまう。まだ王女への謝罪を聞いていないのに、奪った命への償いをしてもらっていないのに。
王女が微笑みながら目を閉じると、兄は何でという言葉を残して息絶えた。正直、王女なら何とかして生かしておくかと思ったけれど、ちゃんと生き物らしい。さすがに今のまま、兄を生かしておくのは見ていられなかったのかもしれない。

「あの、お兄・・・様・・・?は何で生きられなかったのですか?」

「私は魔女じゃないから」

万の血は純粋な種族じゃないとダメらしい。だから半人半獣の俺の血を浴びた所で何も起こらないし、見た目だけでシオラを鬼と判断していたから無駄に命を落とすだけだったと。
そうか、だから最後の二人になっていたのに冷静だったのか。
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