君がいればそれだけで。
気まずい一瞬の沈黙からどっと笑いが溢れたんだ。なぜ笑っているんだ。俺は国王に別の国へ行きたいと裏切りにも似た言葉を発してしまったんだぞ。
戸惑っている俺にリズレイドも言うと思ったと笑っている。どうやら、裏切りなどと神経質になってしまう俺の本音を知りたくて国王とリズレイドが協力したそうなんだ。
理由を聞いてからリズレイドと国王に何て事をと責めると笑いながら背中を叩かれた。結構な力で叩かれたものだから痛かったけれど、一人だけ状況把握出来ていない王女に癒されていた。

「これからもここにいなさい。君たちが鬼の国とこの国の架け橋になるんだ」

肩に乗せられた国王の手は重く、温かかった。もっと素直になって良かったんだ。もっと早く気付けばヒューがいつかの別れを悲しませる事もなかったんだ。
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