君がいればそれだけで。
目の前でくっつくなよと思いはしたけれど、表情に出さぬよう堪えていた。堪えて報われる事はなかったけれど、納得したような王女の表情とそのまま抱きつかれたという現実に混乱していた。

「任務の延長なのか、国に移住してくるのか訊かれたんだ。だから移住してくるのだと伝えただけだ」

「だから不思議な表情してたのか」

「王女様は少し抜けているから」

舞踏会も終わり、四人で風呂に入っていた時の事。パルさんが王女に耳打ちされた内容を話してくれたんだ。たまにあるんだよな、どちらなのか分からないって訊いてくる事が。前は確か、村の人が穀物を収穫する時に“もう収穫だな”という言葉だった。
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