君がいればそれだけで。
「じゃあ、また後でな」

「・・・俺さ。なんか、悪い事した?」

「ううん、大丈夫だよ」

兄さんが僕を撫でてくれた時の温かさはいつもと変わっていなかった。さっきの違和感は勘違いだったのかな。
ポケットに手を突っ込みながら申し訳なさそうな表情を浮かべたベクウだったけれど、正直助かったと思っている部分もあった。兄さんを見ていると隠せなくて話してしまいそうだった。
まだ体温の残る頭に一度手を乗せ、ベクウと一緒に部屋を出た。会いたくない、出来るだけ人と会いたくないと思っていても王女には顔を見せなければいけないから仕方のない話か。
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