君がいればそれだけで。
二人きりになるなんて初めてだなと思いながら、どこが悪いのか訊くと王女は自分の胸に手を当てた。心臓が悪いのかとも思ったけれど、違うのだと首を横に振られる。かと言って骨や皮膚、筋肉でも無いようだった。

「心がね、おかしいの」

「心・・・、ですか・・・?」

「パルと出会った時の事もヒューと出会った時の事もはっきりと思い出せないの」

負の心が無い王女はただ不思議という表情しかしていなかった。負の心があればきっと悲しむような話なのに涙は一粒も流れていなかった。
悲しめない王女に僕は真実を話せなかった。いつか帰ってくる負の心のためにも、調べてみますとしか言えなかった。
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