君がいればそれだけで。
幼かったから何も思っていなかっただけで、異種族である私を嫌っていたり恐れていたりしたらどうしようと何度も思った。思いの種類は違うが、要するにこういう事だろう。

「王女様にお会いしたい・・・っ」

「・・・?どういう事だ」

今の王女は偽物で、別にいるというような口調だった。机の上で握り締められたパルの拳は自分の無力さを物語っている。パルでさえ辿り着けない場所に王女がいると言いたいのか。それとも行方不明であると言いたいのか。
パルは気付いていなかった私に説明してくれた。今城で王女を名乗っているのは分身みたいな物。体は王女だが、中身が異なっているそうだ。異なっていると言うのは違うか。人格の主体となっていた部分が抜け落ちてしまっている。
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