君がいればそれだけで。
隠し通路から出た先は応接室だった。何度か天井を確認していたし、無事に出られる所を探していたのかとも思ったが違うらしい。もう一人の王女が驚いたように俺たちを見つめていた。

「何で?出られないようにしていたのに」

「うん、まーね」

もう一人の王女は後退りし、応接室から出ようとしたが出来なかった。負の心の王女が魔力を使い、鍵をかけたんだ。何度開けようとしても開かない扉に観念し、俺たちの方を向き直して殺意を向けてきた。正の心でも殺意が芽生えたり、決まり悪そうな表情を浮かべたりするんだなと呑気な事を考えてしまっていた。
正の心と言うのだから悲しみや妬みなど知らない、幸せな事しか分からない心なんだと思っていたから拍子抜けしてしまったんだ。
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