君がいればそれだけで。
振っていた手を胸の前で強く握りしめていた王女に何も出来ない自分を悔しく思っていると、パルが部屋の中に入ってきた。いつもは仕事で忙しいのにどうして今来るんだよ。パルが来たら俺が出来ずに悔しがっている事さえ平気でやってのけるんだろう。

「やっぱり。王女様、いかがなされましたか?」

「ねぇ、パル?あの子はあの子の自我を持てていると思う?」

「あの方は王女様とは全く違います。考え方も、性格も。王女様のように平和を望んでもおられません。自分が楽しいと思える日常を望んでおられます」

幼い頃の王女が本当に別の人物として形を残しているなら性格や考え方、全てが違ってもおかしくは無いんじゃないのか。
< 245 / 300 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop