君がいればそれだけで。
「そう言えば、どうして依頼人に拘るんだ?」

「もう少し、親密になってから話すよ。結構重いんだ」

両親がそうだったんだ。祖父の借金を祖母が肩代わりして、その借金を父が庇って。でも、早死にした父は生前に腹切れなかった。母は祖父母に借金を払わせようとしたが、俺たち子供を売って金を作ろうとした。それが嫌なら文句を言わずに母が返せと脅した。そのまま母は過労死。結局俺たちは売られた。
今、妹たちがどこで何をしているのか分からない。幸せでいるのかも、生きているのかさえも。もしかしたら俺がいた事なんて忘れているのかもしれない。
幼い頃から会っていないのだから、町で見かけても分からないだろう。気付いていないだけですれ違っていたかもしれない。
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