君がいればそれだけで。
今の俺には分からない話だ。きっと、暗殺者として働く俺を兄とも思いたくは無いだろう。仕事に誇りがない訳ではないが、胸を張って堂々と言えるような職ではないしな。
同じ命を奪う仕事でも国のためという肩書きで命を奪う兵士とは正反対の仕事。国のためじゃない。理不尽な理由でも、産まれたばかりの子供でも。この両手で命を奪わなきゃいけないのだから。

「そうか。なら無理にとは言わないさ」

「物分かりの良い奴だな」

「上辺だけな?」

パルさんもついで程度に探ってみると言って別れた頃、苛立ちはどこかへ消えていた。でも、苛立ちが消えても問題が解決した訳じゃない。
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