君がいればそれだけで。
僕に兄との過去があると賭けたという考えも取れるけれど、賭けにしては結構危険じゃないか。なら本当に兄なのか。他に思い当たる人もいないけれど、兄もあの時両親と父親と一緒に殺されたはずじゃなかったのか。

「大丈夫・・・ですか・・・?」

「っ!・・・いや、あぁ・・・」

日が完全に沈んで真夜中になった頃、目を覚ました旅人は僕の顔を見るなり驚いていた様子だった。混乱しているのか、息も真面に出来ているとは思えない。取り合えず背中を擦ると、泣き出してしまった。
慰めても逆効果でもっと涙を流してしまう。困ったなと思いながら、僕は他に何も出来ずにいた。顔が見えないのがもどかしいけれど、今は泣き止んでもらう事が先かな。
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