私だけのヒーロー
「相変わらずドジだな」
頭上から聞こえたその声は、聞き覚えのある声。
「……たっくん」
私を助けてくれた救世主の正体は、幼なじみのたっくんこと、拓海だった。
私の頭と太ももを抱え、お姫様抱っこ状態で私を支えていた。
恥ずかしさから固まって動けない私を、たっくんは優しくその場に立たせたくれた。
「あの、ありがとう……」
「おう」
「ごめん、大丈夫だった?」
ジャンプしてきた男の子が謝ってくれたのに、私は上の空で、目の前のたっくんしか見えなかった。
「気をつけろよおまえら」
「悪い悪い。今度からは本当に気をつけるよ」
たっくんはその男の子と友達なようで、そのあと話しながら、その男の子たちと後ろの方へ行ってしまった。
こうしてたっくんと話したのはいつ振りだろう。
幼なじみって言っても、特別仲が良いわけではない。
親同士が中学の同級生で仲良くて、住んでいる家も近いから赤ちゃんの頃から知っているってだけ。