君 色。 <短>
「……言えなかったんだ」
「え?」
「本当は、待っててほしいって……そう言いたかった」
「じゃあ!じゃあどうして!」
……なんで伝えてくれなかったの?
「駄目だと思ったんだ。俺のワガママで、南を縛っちゃいけないと思った」
「そんなの……わけわかんない……」
「だけど、俺は勝手な奴だからさ。きっぱり別れることもできなかった。中途半端に南を置いてった……
……なんて。単に俺が情けなかっただけ。なんだかんだ言って自信がなかったんだよ」
――ケイちゃん。
ケイちゃん……
「本当、勝手すぎるよ」
「ゴメン」
「私きっと、今もまだあの日に縛られてる」
「……」
「ねぇ、きっぱり言ってくれないかな?あの日からずいぶん経っちゃったけど……ちゃんとしたサヨナラを……聞きたい――」
いい加減、時計の針を動かしてやらないと。
そのうち錆びついて、本当に動かなくなっちゃいそうだから。
胸が飛び上がりそうなキスは、もうできないかもしれないけど……
穏やかに、幸福を運んでくれるようなキスを、また味わってみたいんだ。
あの日からずっと、繋いだままのケイちゃんの手を離すことができたなら
私はもう一度、誰かをそんな風に思えるんじゃないかって。
そう、思うから――