君 色。 <短>
君色。
「たとえもう一度あの日に戻ったって、俺はサヨナラを言えない。そして今も……」
「な、んで――そんなの……」
「好きなんだ。今だって南を好きなままだ。変わったつもりだった。忘れたつもりだった……つい、さっきまでは――」
「ケイ……」
ケイちゃんの目がまた細くなる。
「俺もつくづく、勝手な性格だよね。
だけど、いつもいつも南は俺の中に居たんだよ。誰といても重ねちゃうんだ。比べちゃうんだ。
今の今まで、それが“まだスキだから”ってことに気付けなかったなんて……
本当に俺ってバカだよな」
吸い込まれそうな瞳に、私は反らすことができなかった。
薄暗く、静まり返った公園の中で、ケイちゃんの声が響く。
私達だけの空気が生まれる。
ケイちゃんの言葉は、恐いくらいに
私の心と同じことを囁く――
「こんなこと、俺に言う権利ないけど……今更だけど……やっぱり諦めたくない。……諦めないで――」
「ケイちゃん……」
「もう後悔したくないんだ。だから言うんだったら南から言って欲しい」