名前を呼んで、好きって言って
先生は春木君のほうを見ることなく言った。
なんて辛らつな返し。
「秋保の話し相手になるよ!」
先生は春木君の後ろにいる私を盗み見る。
どうして私のほうを見るのかわからなくて、私は首を傾げる。
だけど何を言うわけでもなく、春木君に視線を戻した。
そして満面の笑みを作る。
「お前が適任だと思ったんだが、お前じゃ無理だったみたいだ。悪いな、帰れ」
「納得できないんだけど!?」
さすがの春木君でも、この対応は許せなかったみたいだ。
「加宮ちゃんが嫌がった。だからダメ」
先生がそう言うと、春木君は勢いよく振り向いた。
「秋保、嫌じゃないよね!?」
はっきりとダメな理由を言われたのに、なんて諦めが悪いんだろう。
こんなところを見ると、どう考えても……
「嫌って言っても来そう……」
私は慌てて口を塞ぐ。
先生の接し方が伝染ったのだろうか。
私は思ったことをそのまま口に出してしまった。
春木君も驚いている。
「……加宮ちゃんの言う通りだな」
先生はため息交じりに言う。
「じゃあ来てもいいってこと?」
先生のそれを許可と捉えたらしい。
春木君の背後にしっぽが見える。
どうやら私が言ったことは気にしていないようだ。
「好きにしろ」
そして京峰先生は呆れた表情を見せた。