名前を呼んで、好きって言って

「……そうだ。紅羽さん、私、柊斗さんにブラウニーを焼く約束をしているんです」
「え、なんで?」
「柊斗さんに食べたいって言われたから?」


すると、紅羽さんはくすくすと笑いだした。


「アイツ、まだ甘いものが好きなのか」
「この前は私が作って行ったクッキーを盗み食いしていました」


紅羽さんはさらに笑う。


「それで? ブラウニーとやらをリクエストされたからなんだと言うんだ?」
「紅羽さんも一緒に作りませんか」


途端に紅羽さんから笑顔が消えた。


「そこに、手紙を書くんです。好きだっていう気持ちを伝えるためじゃない。あなたはもう自由だと伝える手紙です。私が配達係やりますから」


勝手なことを言っているとわかっている。


紅羽さんが柊斗さんを縛っているとは思えないし、柊斗さんがそれに苦しんでいるとも思っていない。


でも、この表現しか思い浮かばなかった。


「……わかった」


その返事を聞いて、私は思わず安堵のため息をついてしまった。


「ただし、私はお菓子作りなんてできないからな」
「はい、一緒に作りましょう」


紅羽さんとの会話が終わって、美桜が頬を膨らませていることに気付いた。
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