名前を呼んで、好きって言って

「美桜、どうしたの」
「だって二人とも、私だけ仲間外れにするんだもん」


表情からわかっていたけど、美桜は拗ねていた。


紅羽さんはそんな美桜を見て、不敵な笑みを見せた。


「そうだな、今度こそ秋保の好きな人の話を聞くとしよう」


美桜は目を輝かせて私を見る。


「え、待って、そこに戻るんですか?」
「私は話した。次は秋保の番だろう」


絶対に逃げられないやつだ。
というか、紅羽さんから逃げられる自信がない。


「なになに、秋保の恋バナ? 私も混ぜてよ」


どうしようかと思っていたら、そんな声が聞こえてきた。
顔を上げると、懐かしい人がそこに立っている。


「瑠衣!」
「よ、秋保。久しぶりだね」


瑠衣は私の隣に座る。
私は思わず瑠衣に抱き着いた。


「お、甘えた? 珍し」


どうしよう、恋バナとか今割とどうでもいいかも。


瑠衣と久々に会えたことがこんなにうれしいとは思わなかった。


「そうか。美桜の幼馴染ということは、必然的に秋保の幼馴染ということになるのか」
「おお、呼び捨て。紅羽と秋保、もう仲良くなったの?」
「恋バナという最強の武器を使った」


そうは言っても、ちっとも楽しい雰囲気にはならなかったけど。
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