名前を呼んで、好きって言って
『やあ、久しぶりだね、春木翔和。元気にしてるかなあ。なんて、挨拶はいっか。加宮秋保サンは預かったよ。傷付けられたくなかったら今すぐ一人であの場所に来い』
知ってる顔。
知ってる場所。
縛られた秋保。
床に転がされて、眠らされている。
間違いなく俺のせいだ。
俺のせいで、秋保がこんな目に遭っている。
「ねえ翔和、今の音声、何」
翠が聞いてくるけど、秋保を守るためには言えなかった。
「……ちょっと行ってくる」
「翔和!」
待ってて、秋保。
絶対に助けに行く。
◆
目を開けると、そこは知らない場所だった。
「お目覚めですか、お姫さん」
胡散臭い笑顔の人だ。
「そうだ、借りた携帯返します」
彼は適当に投げたから、私のスマホの画面にひびが入った。
人の物を壊しておきながら、その人は笑っている。
「君もそうならないといいねえ」
怖い。
逃げたい。
助けて。
そう思っても、私には何もできない。
「……どうしてこんなこと……」
すると、彼から笑顔が消えた。
さっきの不気味な笑顔より真顔のほうがマシかもしれない。
「君は知らないだろうけど。春木翔和は少し前まで喧嘩負けなしの不良だった」