名前を呼んで、好きって言って
「納得がいかないんだよ。女のために喧嘩をやめて、自分がしてきたことをなかったことにしているなんて。ずるいと思わないか」
聞けば聞くほど、ただの逆恨みにしか思えない。
「君の携帯を使って、春木翔和を呼び出した。君はそこでアイツがボコボコにされるところを見ておくんだ」
……待って。
それってつまり、私のせいで春木君が怪我をするってこと?
そんなの絶対嫌だ。
どうにかして春木君が来る前に逃げ出さないと。
そう思ったのに。
「意外と早かったね、春木翔和」
倉庫のドアが開き、そこには春木君が立っていた。
でも、私が知っている春木君ではなかった。
あの日、ファミレスであの人に向けていたような目をしている。
「春木君……」
「秋保!」
春木君が私を見つけて一歩踏み出すと、私は男に無理矢理立たされて、首元にナイフを当てられた。
少しでも動けば切れてしまいそうだ。
「いいかい、春木翔和。この子に傷をつけられたくなかったら、一切手を出すな」
彼のその言葉を合図に、大勢の怖い人たちが出てきた。
一人相手に、何人も。
ずるいのはどっちだ。
「……秋保」
春木君は笑う。
「少しだけ、目閉じてて」